Vaundy『再会』歌詞考察|「またここで話そう」が照らす“喪失のその先”へ

  • 2025年6月29日
  • 2025年6月29日
  • Vaundy
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Vaundy『再会』歌詞考察|「またここで話そう」が照らす“喪失のその先”へ

Vaundyの『再会』は、アニメ『光が死んだ夏』の主題歌として書き下ろされた楽曲。
物語の中で描かれるのは、失われた日常と、そこに残された絆。サビに込められた言葉は、その世界観をそのまま歌に封じ込めたような、儚くも強い祈りに満ちている。

「もしもここからまた出会えるなら」
この一行から始まるサビは、“再会”という希望が前提に置かれている。言い換えれば、それは一度別れが訪れたことを意味しており、「再び出会いたいほどの喪失」を経験した誰かの視点だ。

「この先は一瞬もう一寸の隙も 忘れず全部覚えておこう」
ここには、後悔の念と決意が詰まっている。かつては見過ごしていたかもしれない瞬間や、何気ない時間さえ、今は愛おしくて仕方がない。もう二度と同じ後悔を繰り返さないように、記憶に刻み込もうとする強さがにじむ。

「目を閉じあう度 まぶたで優しく 君に出会えるから」
目を閉じても感じる存在。それは現実にいない相手かもしれない。
でも、心が記憶している限り、人は何度でも出会える——そんなメッセージにも感じられる。「優しく」という語感からは、相手への未練よりも、慈しむような愛情が伝わってくる。

「またここで話そう」
このラスト一行が胸に響くのは、場所よりも「再会を信じる気持ち」が核にあるからだ。別れてしまった相手と、もう一度、同じ場所で笑いあえる——その想像だけで、どれだけ人は救われるだろう。

アニメ『光が死んだ夏』では、人ではない“何か”と共に過ごした記憶が、喪失を越えて心に残り続けるというテーマが描かれる。『再会』はまさにその核心を歌っている。
「君を失ったその後の物語」を、Vaundyはこの短いサビで丁寧に綴っているのだ。

喪失や別れを経験した人にとって、『再会』のサビはただの歌詞ではなく、心の中にもう一度火を灯してくれるような光になる。
きっと、「またここで話そう」と願うことは、誰にでもできる、最も切実な希望のかたちなのだ。