「逃げることも、生きることだ。」
Ed Sheeranの『Drive』は、
疾走感あふれる音像の中に、葛藤と救い、そして希望を織り交ぜたロック・アンセム。
加速する鼓動と共に“どこか遠くへ行きたい”という衝動が溢れ出し、
そのドライブの先には「終わり」ではなく「新たな始まり」が待っている。
この記事では、『Drive』の歌詞を章ごとに丁寧に和訳し、
その背後にある感情や文脈を掘り下げて考察します。
燃える夜を駆け抜けながら、自分自身と向き合う物語に触れてみませんか?
『Drive』冒頭:都市を駆け抜ける衝動
Flyin' through the city with the speakers up loud スピーカーを大音量で鳴らして街を駆け抜ける Speedin' by with the top down オープンカーで猛スピード Fast lane, livin' till they put me in the ground 地面に埋められるまで、全力疾走で生きる And I don't wanna stop now 今は止まりたくない I'll be gone with the click of a finger 指を鳴らすように消えてしまえる Say the word, give a call, I'll be comin' back around 呼んでくれたら、すぐに戻ってくるよ
この冒頭部分は、「抑えきれない衝動」が描かれています。
スピード、都市、高揚感——どれも現実から逃げる手段であり、生きるための一時的な“逃避”でもあります。
「I’ll be gone with the click of a finger」は、一瞬で現実を離れたい願望の象徴とも言えます。
『Drive』1番後半:逃避と信仰、過去との決別
Flyin' through the city, I got God on my side 街を飛ばす 神が味方についてる But the real world is not far でも現実はすぐそばにある Push to the limit, I'll be burnin' all night 限界まで攻めて、夜通し燃え続ける Gettin' tailed by a cop car パトカーに追われてる Pull away, wind blowin', now I'm cruisin' 追い抜いて、風を切りながら走る Put the past in the past, a new day is comin' 過去は過去にして、新しい日々を迎えよう
「神が味方してくれてる」という一節は、自分を信じるための心の支え。
しかし同時に「real world is not far」と続くことで、逃れられない現実との距離も感じさせます。
「Put the past in the past」は、過去のトラウマや傷を手放す宣言この曲は単なる逃避ではなく、“過去との別れ”を肯定する歌なのです。
『Drive』サビ①:ふたりで飛び立つ夜
Ha-la-lay-la, we can ride ハラレイラ 走り出せる Four wheels, you and I gotta get out of here 君と僕、4つのタイヤでここを抜け出そう Ha-la-lay-la, my saviour ハラレイラ 君は僕の救い主 Ha-la-lay-la, we can fly ハラレイラ 僕らは飛べる Out of this burnin' fire, just take me anywhere この燃え盛る炎から どこでもいい 連れ出して Ha-la-lay-la, my saviour ハラレイラ 僕の救い主 Pedal down and drive, drive アクセルを踏み込んで 走れ
サビでは、「逃避」がふたりで分かち合うものへと変わります。
「Ha-la-lay-la」という架空の祈りのようなフレーズが印象的で、現実逃避をロマンに昇華している点が特徴的。
「my saviour(救い主)」と呼ばれる相手は、現実に飲み込まれそうな主人公の光でもあります。
『Drive』2番:焼け跡からの再スタート
Out of the city, now we're switchin' four lanes 街を出て、高速道路の車線を変える Got our eyes on a fresh start 新しい始まりに目を向けて The world as we knew it, that was caught up in flames 知っていた世界は燃えてしまった Get ready for the next part さあ、次の章へ進もう You know I'm good if I'm back in the gutter また底辺に戻っても、俺は大丈夫 'Cause this life, it was never 'bout the money この人生は 金のためじゃないから
「燃え尽きた世界」とは、過去の自分や人間関係、古い価値観かもしれません。
「次の章」と語られるように、Driveは破壊と再生のプロセスさらに「金のためじゃない」と続けることで、物質的成功ではなく、自分らしく生きる選択
『Drive』ラストサビ:ただ走れ、答えはいらない
Pedal down and drive アクセルを踏み込んで走れ Just drive ただ走れ
このシンプルなリフレインにこそ、『Drive』の本質があります。
「行き先」も「意味」も問わずに、とにかく走ることに意味がある。
それは迷いながらでも生きていくことのメタファーであり、
救いを外に求めるのではなく、自分の“Drive(衝動)”に従うという選択肢の提示でもあります。
まとめ|『Drive』は現実を受け入れる“逃避”の歌
Ed Sheeranの『Drive』は、
ただのスピードや自由を歌っているのではありません。
そこには「現実の苦しみ」「過去の傷」「それでも進む強さ」が詰まっています。
この曲は“逃げてもいい”と肯定してくれる、優しい祈りのような存在。
きっと誰もが、心のどこかで「走り出したい」衝動を持っている。
その想いに、音楽というエンジンで火をつけてくれる一曲です。
迷いながら、彷徨いながらも、
“Drive”し続けるあなたへ——。